株式会社三越伊勢丹システム・ソリューションズ

「共同配送事業」参画で残在庫60%減、物流拠点1カ所減を実現。中元・歳暮期の業務効率が大きく向上。

#プラットフォーム事業

品格と親しみやすさで愛される、広島になくてはならない百貨店

福屋は、1929年、広島初の百貨店として誕生した老舗百貨店で、地元に親しまれてきた。特に広島市内に位置する八丁堀本店は、原子爆弾の投下により一時廃虚と化すも、その試練を乗り越え、今日まで人々の暮しを支えてきた歴史がある。現在、館内には国内外のブランドショップが並び、ファッションや雑貨、食品まで幅広い商品が取り揃えられている。地下のグルメコーナーは人気が高く、広島ならではの特産品や高品質な食材が楽しめる。また、福屋は地域密着型の百貨店として、広島の伝統や文化を大切にしながら、新しいトレンドも積極的に取り入れている。季節ごとのイベントや特別企画が多く開催されるため、顧客は訪れるたびに新しい楽しみに触れることができる。時代の変化に合わせたサービスの向上にも力を入れ、オンラインストアやデジタル技術を活用した快適な買い物体験を提供しているのも特徴のひとつだ。店舗のモダナイズにも力を入れており、2025年秋には八丁堀本店が、2026年春には広島駅前店がリニューアルオープンを予定している。


中元・歳暮の繁忙期を永続的という視点で、自社だけで乗り切ることに不安

中元・歳暮シーズンは、百貨店にとって目が回るほど忙しい時期だ。商品を企画し、店内に特設会場を開設するのはもちろんのこと、バックヤードでも特別な発送・物流体制を備えなければならない。福屋の場合、作業を行うために自社倉庫の他に2カ所、外部倉庫をこの時期に借りていた。人員体制という点でも、スタッフ部門の社員応援を仰ぐだけでは足りず、アルバイト要員を約50人雇用していた。そのアルバイト要員も高齢化が進み、株式会社 福屋 営業副本部長 上田 知宏氏は、「自社だけで乗り切ることに長年不安を抱えていた」と振り返る。

そうした中、百貨店協会等で交流のある井筒屋より、同社が参画している「共同配送事業」についての情報がもたらされた。中元・歳暮で大きな比重を占める食品ギフトを管轄する食品部が、「業務効率が向上してなかなかいい仕組みだ」という話を聞いたのだ。そこで、同じく参画百貨店である藤崎と天満屋にもヒヤリングを重ね、さらに興味をつのらせた。2022年10月、「共同配送事業」の運営主体である三越伊勢丹ビジネス・サポート(以下、IMBS)と、共同配送事業のシステムを統括している三越伊勢丹システム・ソリューションズ(以下、IMS)から、詳しい説明を聞き、「参画できるのではないか」という感触を持ったという。

多くの百貨店が参画する「共同配送事業」とは

ここであらためて「共同配送事業」について紹介しておきたい。これは、IMSが展開する「百貨店共通プラットフォーム」のビジネス連携ソリューションの一つだ。元をたどれば2003年、伊勢丹と阪急百貨店および全日本デパートメントストアーズ開発機構(以下:A・D・O)に加盟する百貨店の間で、中元・歳暮の食品ギフトに関してサプライチェーンマネジメントの概念を採り入れるという目的で始まった。具体的には、商品・カタログの共通化、共同仕入れ、物流センターの集約、システム活用による共同配送などを行うことで、仕入差益の改善と大幅な物流コストの削減を図ろうとしたのである。ここでは、梱包業務を国分が一括して行い、配送業務をヤマト運輸に一元化するという枠組みも固まった。その後、A・D・O自体は2020年に解散する。顧客の商品選択に関わる業務を共同仕入れで行うのは妥当ではないという判断からだった。しかし、共同配送のみでも、コスト削減の観点から、また今日的な物流問題の解決、CO2排出削減、商品ロスの回避、オペレーション負荷の軽減といった意味でもメリットは大きいはずだ。そこで、共同配送の取組は継続することになった。これが「共同配送事業」で、参画百貨店が、三越、伊勢丹、丸井今井、岩田屋、藤崎、東武百貨店、名鉄百貨店、天満屋、井筒屋だったのである。


食品部、物流部の負担軽減を期待し、福屋は参画を決断

結論からいえば、福屋は「共同配送事業」に参画することに決めた。上田氏はその理由を次のように語る。

「一つは在庫の考え方です。中元・歳暮期が終了したときに残った在庫を百貨店側で引き取る必要はないというのは大きかった。これによって、当社でのシーズン終了後の作業や解体セールの準備作業が大幅に軽減されます。

 また、思っていた以上に商品選択の自由度が高く、必ずこれは選ばなければいけないという束縛がほとんどゼロに近い状態で、かなり独自に商品が選べるのがいいと思いました。今まで取り扱っていなかった商品、新しい商品をお客様に提案することもできます。

 お客様視点でも、お届け先に一番近いハブセンターから発送されるため、商品が届くまでの日数が早くなるというメリットがあります。

 業務効率という面でも、食品部、物流部の負担がかなり軽減できる目算が立ちました。共同配送システムと接続するために、当社システムの改修コストはかかるものの、5年、10年先を想像したとき、導入するメリットの方が大きいと判断しました」


シーズン終了後の残在庫が60%削減。自社物流拠点は3カ所から2カ所に


システム改修は、IMS、IMBS、福屋の情報システム部、同ギフトシステム担当者、同EC担当者がオンライン会議で一同に会しながら、2週間に1度、約10カ月かけて進められた。ギフトシステム側で求められたのは、共同配送対象商品に関して新たにそれとわかる商品フラグを設定すること、注文内容を判別し共同配送か自社かのデータ伝送振り分け、発送データを転送する際に必要なスケジュール情報を追加することだったが、思ったほどの負担ではなかったという。

導入対応を終え、初めて参画したのは2024年の中元期だ。福屋では総数約1,500商品のうち、250商品を共同配送の対象とした。従来どおりの商品承りルールを踏襲し、日付指定をNGにするといった規制はあえて設けなかった。その結果、配送対象全商品のうち、60%(35,000個)が共同配送に流れ、それは売り上げ構成比にして15%となった。

共同配送というしくみを採り入れたことで、同社のさまざまな部門で確かな効果が表れた。まず株式会社 福屋 食品部 部長 藤原郷一郎氏は次のように語る。 「シーズン終了後の残在庫が60%削減しました。これにより、期待どおり後工程作業の負荷が軽減しています。また、自社で在庫を持たない『発送伝票仕入れ』となるため、商品手配業務が減少しました。さらに、これを機会に新しく3つのブランドと新規取引を開始することになりました。カタログ制作も、自社単独だと素材を集めるのに苦労しますが、このしくみでは商品写真や説明原稿を受領できるため効率化が実現しています。結果、共同配送対象商品で、約2%利益率が向上しました」

一方、物流部の家守 毅氏はこう語る。 「何よりうれしいのは、ピーク時でも2~3日の配送短縮が実現したことです。平均して承り後3日でお届け先に着いていました。そして、配送リードタイムが短縮したことで、お客様からのお問い合わせも大幅に抑制できました。包装委託費用に関しては約10%の削減が実現、また自社倉庫からの出庫量が30%削減したことで、物流拠点を3カ所から2カ所に削減することができました」

人事部においても、アルバイト要員の約10%減が実現し、これにより高齢化の解決に向け一歩前進となった。社員の応援頻度も軽減している。

大規模な取り組みであるにも関わらず、中元期間中、福屋側システムとIMS側共同配送システムとの連携はエラーや障害なく機能した。「発生した不明点については、IMSが常に迅速に回答してくれた」と情報システム部も評価する。

大きな手応えを実感した同社では今後、共同配送の使用比率向上と共同配送対象商品の拡大を検討していくといい、これによりさらなる効率化を高めていく予定だ。

福屋様お写真

[ユーザープロフィール]

株式会社 福屋

設立    1929(昭和4)年8月
所在地   八丁堀本店:広島市中区胡町6-26
従業員数  400名(男性130名 女性270名 2025年10月現在)
資本金   4億6千万円
代表者   代表取締役社長 大下 洋嗣
URL https://www.fukuya-dept.co.jp

[取材に対応していただいた方々]

株式会社 福屋
取締役 営業副本部長
上田 知宏氏

株式会社 福屋
食品部 部長
藤原 郷一郎氏

株式会社 福屋
物流部 次長
家守 毅氏

(取材当時の役職です)