株式会社三越伊勢丹システム・ソリューションズ

「百貨店共通プラットフォーム」コンセプトに共鳴。東武百貨店は「MDX」のファーストカスタマーに。

#プラットフォーム事業

地域密着、多彩なテナントミックスを経営方針に多様なニーズに応える品揃えを展開

東武百貨店は、東武鉄道を中核とした東武グループの一員であり、首都圏に池袋本店・船橋店の2店舗を構える商業施設である。1962年5月に開店した池袋本店は、巨大ターミナル駅である池袋駅に直結する旗艦店舗であり、数回の増改築を経て、現在は関東地方で最大級の売場面積を有している。「食の東武」で知られ、2フロアからなる食品フロアは、国内最大規模を誇る。また、地域に密着し沿線のお客様の生活向上のお役に立つことを目的に、百貨店の枠にこだわらず、多彩なテナントミックスを創造すべく、幅広いブランドを取り揃えている。ターミナル立地を活かし、日常の買い物から贈答品に至るまで、さまざまな商品をワンストップで購入できる環境を提供している。


20年以上にわたって運用してきたシステムに数々の課題

同社では、20年以上にわたってWindowsベースのMD業務システムを運用してきた。社員には慣れ親しまれてはいたが、そこには複数のリスクが顕在化していた。1つめは、システムの老朽化だ。ハードウェアについて通常保守の期限を迎えていたが、ソフトウェアについても保守サポート終了の申し入れがベンダーからあり、ハードウェア、ソフトウェアの両面から、更新の必要性が迫っていた。2つめは、ベテラン社員の減少である。現在運用しているシステムを、導入当初から知る人物が、IT推進部側でも、ベンダー側でも少なくなり、経験値が手元から失われつつあった。また、長年にわたって、社内外からの要求事項に対応するべく機能の改修・追加を重ねてカスタマイズを進めていたことも取り扱いハードルを上げていた。3つめには、社会情勢の変化に伴う対応への懸念がある。インボイス制度の導入、各種の法令改正や社会情勢の変化にスピード感を持った対応が求められる中で、従来のシステム開発・運用体制でそれらを受けとめきれるのかという懸念があった。最後の4つめは、個別対応の負荷である。東武百貨店としてシステムを維持するかぎり、起きる変化への対応においては、要件定義やテストなど東武百貨店主導で動かなければならない。それはIT推進部にとって非常に負荷の重い業務だった。株式会社 東武百貨店 執行役員 IT推進部 部長 新倉 哲郎氏は、抱いていた課題感を次のように語る。

「最も大きな懸念は、今後の物流業務の社会的な変化に柔軟な対応が取れるだろうか、ということでした。百貨店の商品納入体制は、百貨店だけで解決できない部分も多いのですが、社会的に方向性がまとまれば、早期の対応が求められます。そのときに、自社単独で情報収集し、新しい技術を導入するためのコストや人的リソースを確保するのは困難だと考えました」

「百貨店共通プラットフォーム」コンセプトに共鳴、「MDX」をファーストカスタマーとして選択

 2022年、同社は発注業務、検品業務、PLUコード管理業務に関して、ベンダー各社に提案依頼を行った。このとき、変化に対応しながら自社に負担がかからない形で業務が継続できる仕組みであること、を要件に掲げた。結果として5社が応札したが、東武百貨店は、三越伊勢丹システム・ソリューションズ(以下、IMS)の百貨店向け業務システム体系「百貨店共通プラットフォーム」の基幹業務ソリューション「MDX」を、ファーストカスタマーとして導入することを決定した。「提案された案の多くが、『当社の持っているシステムをいかようにもカスタマイズします』というものであったのに対し、IMSは『複数の百貨店が共通して使える標準的なプラットフォームを作っていきます』と、他社とはまったく異なるコンセプトを打ち出されていて、そこが決定的に響きました。そうすると、法令対応や社会情勢への対応も個社課題ではなく百貨店共通の課題となり、IMS主導で、その対応スピードやコストというものを『百貨店共通プラットフォーム』参加企業で共有・分散できるというイメージが頭の中で広がりました」(新倉氏)

次に、IMSが三越伊勢丹という百貨店のシステム会社であり、百貨店での経験が豊富で、業務を一から説明しなくても言葉が通じるという点も評価された。さらに、「MDX」はクラウドを使ったサービスでの提供であり、参加者が増えていくことで将来的にコスト抑制感も高まっていくと思われた。また、サービスで提供するということは、パッケージを販売して終わりではなく、機能を向上させながら責任を持って継続提供してくれるだろうという期待が持てた。くわえて、IMSは百貨店向けWEB-EDIサービス「IQRS.net」の運営者であることも大きかった。将来的にWEB-EDIにもメスを入れざるを得なくなった時に、東武百貨店の取引先の多くが利用する「IQRS.net」を運営しているIMSのMDXを利用するというのが、取引先にも利便性が高いはず、と考えた。それにしても、IMSは三越伊勢丹グループであり、一見すれば競合他社である。またファーストカスタマーというのは想定しないリスクに遭遇する可能性もある。しかし、迷いはなかったと新倉氏は語る。

「『MDX』が関わる分野は非競争領域です。差別化をすることでお客様やお取引先様に何かアピールできる分野というとそうではありませんから、三越伊勢丹をライバル視して検討から排除するというのは自ら機会を逃すことになります。また、結果的にファーストカスタマーとなりましたが、仮に、従来型のシステム導入を選択した場合、IT推進部に携わる社員が、解決しなければならない課題を先送りすることになる。その選択はないと考えました。」


問い合わせ対応から解放、IT推進部はより本質に近い業務に専念

新会計年度を翌月に控えた2024年2月、「MDX」は、池袋店、船橋店、同じ東武鉄道グループの東武宇都宮百貨店の宇都宮店、大田原店、栃木市役所店にも同時導入された。事前に研修会を開催したこともあって、システム移行はスムーズに行われ、安定稼働を続けている。導入によって、エンドユーザーからのシステム問い合わせ対応は、IT推進部からIMSの役目となった。株式会社 東武百貨店 IT推進部 監理・運用課 課長 宮地 健太郎氏は、次のように語る。「導入当初はIT推進部でも問い合わせを受け、イレギュラー解消に向けて動くケースがありました。しかし、稼働が安定してからは問い合わせも減少、またIMSのSEに任せられるようになったため、我々の作業を減らすことができました。時間が生まれたことで、より本質的な業務に充てる時間が増えていると感じています。」

また今回、受発注業務用のハンディターミナルにかわってスマートフォンが導入された。スキャン精度にはまだ少し課題があるが、故障した際に追加調達しやすくなった。メリットはまだある。株式会社 東武百貨店 IT推進部 担当部長 関根 光正氏は、次のように語る。「スマートフォンは、今はまだ『MDX』専用ですが、今後、社内で使っているPHSのスマートフォン化を検討しています。さらに、スマートフォンでデータが見られる、受発注が行えるなどと用途が広がっていけば、汎用端末として活躍してくれるのではと期待しています」

『共通・共有』を実現する標準サービス
コストという観点でも、多額のイニシャルコストを要する従来型のシステム開発に比べると、月額サービスであるという点で抑制が効いていると捉えられている。「今後、我々が大きく期待しているのは、多くの百貨店が『MDX』に参加することと、新機能の追加です。今の『MDX』は、当社とIMSが『これが標準ではないか』と探った仕組みですが、他社が参加することで、より効率的な考え方や、我々が気づかなかった手法が出てくるかもしれません。そうした知見がどんどん蓄積され、我々にフィードバックされ、さらに改善される、というサイクルが回るようになれば、非常に助かるなと考えています」新倉氏はこのように語り、IMSにエールを送った。

将来発生しうる様々な環境変化への対応を懸念し、百貨店業ならではのビジネスロジックを標準化・共通化して共有するという百貨店共通プラットフォームのコンセプトを、真っ先に採り入れたのは東武百貨店だった。それは、小売流通業界の事業環境が激しく変化する中で、百貨店の未来を見据えた判断だった。

東武百貨店様お写真

[ユーザープロフィール]

株式会社 東武百貨店

設立    1946年7月13日(※百貨店事業 1960年9月1日)
所在地   池袋店:東京都豊島区西池袋1-1-25
      船橋店:千葉県船橋市本町7-1-1
従業員数  591名(男性252名 女性339名 2025年3月1日現在)
資本金   5,000万円
代表者   代表取締役社長 社長執行役員 田中 尚
URL https://www.tobu-dept.jp

[取材に対応していただいた方々]

株式会社 東武百貨店
執行役員
IT推進部
部長
新倉 哲郎氏

株式会社 東武百貨店
IT推進部
担当部長
関根 光正氏

株式会社 東武百貨店
IT推進部
監理・運用課
課長
宮地 健太郎氏  (取材当時の役職です)